今回は、閑静な住宅街にある“小さなパン屋” さん『パン工房 ベクヒェン』をご紹介します。近くまで行ってもなかなか目印らしきものも見つからない、それだけにたどり着いた時の喜びといったらありません。どれもお手頃価格でお財布にもやさしいパンなので、ついつい買い込んでしまいます。実はここには大きな信念を持ったオーナーが、パンを作っておりました!
八王子実践高校近くの住宅街に、自宅の一角を改装した『パン工房 ベクヒェン』はあります。のぼりも看板がわりのキャラクターも見逃してしまいそうなくらい奥ゆかしい小さなパン屋さんです。
『ベクヒェン』は、ドイツ語で “赤ちゃんのほっぺ” の意味だそうです。オーナーの佐藤美也子さんは、アトピーを患っていた息子さんを健康にしたいと、国産小麦にこだわってパン作りを始めました。徐々によくなるわが子を見て、希望は確信に変わり『食の安心・大切さ』にこだわり、いまでは使命感を持ってパン作りをしています。
※アトピー除去食ではありません。
所在地:東京都八王子市台町1-2-14
でき立てのパン
小さなアクリルケースの中、パンが重なるように並んでいます。
私が行った時には、上段に9種、下段に9種と、奥の棚には食パンが焼きあがっていました。
一つひとつパンの紹介カードを見ながら、選ぶ楽しさ
上段には馴染みのある丸パンやあんぱん、クリームパンが並び、下段にはライ麦を使ったドイツパンを中心にしたパンが並びます。
下段右端には『牛乳マントウ』までありました。「もう少し寒くなったら、このマントウで肉まんを作ろうと思っているの」とのこと。すでにお客さんからは「いつできるの?」と問い合わせが来ているそうです。
パン選びに迷ったらオーナーの佐藤さんに自分の好みや、その日の気分を伝えてみましょう。笑顔でていねいに案内してくれますよ。ついでにおいしく食べる裏ワザなんかも聞けちゃいます。たとえば「ライ麦パンはね、バターに刻んだ小ねぎを乗せるといいわよ。本当はチャイブがいいんだけど、高いから…」といった具合です。
『山型食パン』は、圧巻です。
よつ葉バターを使った山型食パン(1斤/400円:税込)は、こんがり焼きあがった立派な立ち姿に食欲がそそられます。この食パンは一口でおいしいといったパンではなく、噛むほどにおいしさが伝わってくるパンといったところでしょうか。見つけたら絶対に買いです!
食パンを一斤買ってやることといえば、そう “手での引きちぎり” ですよね。旨そうだ!
ボリュームのある『ベクヒェン』の食パンは、トーストにするのがおすすめです。ミミの部分がサクサクと歯ざわりよく、中は軽く口溶けがいいのにモチッとした噛みごたえ。そのままでも十分小麦のおいしさが味わえますが、ジャムやバターと一緒に食べると、お互いを引き立てあって旨さ倍増。
焼きたての食パンの耳だけ集めて、赤ワインと一緒にいただきたい! このサクサクカリカリは病みつきになりそう!! よいオリーブオイルがあれば一緒食べて欲しい。
体にいいモノ、やさしいモノを目指す『パン工房 ベクヒェン』のパンたち
必要以上のものは入れず、余計な仕事はしない。その代わり手間がかかっても手作りできるものは、餡でも、パン種でも一つひとつていねいに作る。『パン工房 ベクヒェン』のパンたちは胸を張っているように見えました。 お客様はご近所の方が多いようですが、オーナーのお子さんと同じようにアトピーを患っているお子さんをもった方たちも買いに来られるそうです。
クロワッサン(1つ/140円:税込)の外側はパリッと焼きあがった層が香ばしく、中はしっとりなのにモッチリ感が味わえます。今までおいしいクロワッサンは手にバターが付くものと思っていましたが、こちらのクロワッサンは風味豊かなのに、サラッとしています。これはカルピスの成分を抽出した残りで作った良質なバター『カルピスバター』を使っているからでしょうか? ちょっとだけカルピスバターの味みをさせてもらいましたが、油っぽさがなくミルキーで爽やかなバターでした。
『ベクヒェン』のクリームパン(160円:税込)は、ミルクの風味の白いカスタードがたっぷり詰まっています。栗あんぱん(230円:税込)は絶品で、栗本来のよさを引き出した甘すぎない栗餡がたまりません!
ずっしりと重たいあんぱんの “つぶ餡” も甘さをおさえめで、いくつでもいけそうです。この餡も、もちろんオーナーが手間暇かけて北海道産の小豆をたいているそうです。(160円:税込)
グラニュー糖のかかったメロンパンは、表面はパリッというより柔らかい感じのパンです。(160円:税込) 昔のパン屋さんを思い出させる懐かしい味わいです。
鳴門金時のガレットはふっくらやわらかく、もっちり食べごたえのあるパンです。サツマイモそのもののやさしい甘さがウレシイ。妙においし過ぎるパンが多い中で、素材の味を大切に作っていることがわかる一品だと思います。(160円:税込)
大きなトマトのフォカッチャは、ワインとも美味しくいただけますよ。しっかりしたトマトの味わいにモチモチのパンがよく合って、そこにワインが加わると口の中ですばらしいマリアージュが行われます。(300円:税込)
※季節によって具材が変わることがございます。
もっとウチの近くにあれば、と思わせてくれるパン屋さんです。いつでも買えるご近所の人たちが羨ましくなります。今後の目標を聞くと「もっとライ麦の比率の高いライ麦パンを作ること」だそうです。ハードパン好きには見逃せませんよ! 特別な日ではなく日常にあって欲しいパン、当たり前に食卓に並ぶパン、それが『パン工房 ベクヒェン』のパンだと思います。
パン工房 ベクヒェン
※情報は取材当時のものです。来店の際は公式情報をご確認ください。
- 住所
- 東京都八王子市台町1-2-14
- アクセス
- 八王子駅南口 徒歩16分
- 営業時間
- 8:30〜18:00
- 定休日
- 月/火/日/祝
- 電話
- 042-621-3185
- 備考
- 予約、取り置き希望の方は連絡を
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