あの女優も惚れた!?名建築家・吉阪隆正が設計した八王子の“逆ピラミッド建築”とは

あの女優も惚れた!?名建築家・吉阪隆正が設計した八王子の“逆ピラミッド建築”とは

東京都八王子市に、重力に逆らうような“逆ピラミッド建築”がある。設計したのは、現在ある女優が継承した住宅を手がけたことでも知られる名建築家。奇抜な外観に隠された、その真意とは――?

学びと建築の宝庫!『大学セミナーハウス』の魅力とは?

八王子市・多摩丘陵の森の中に、思わず「え、これ何?」と二度見してしまう建物があります。まるで地面に逆さまに突き刺さったようなその姿――実は大学セミナーハウスという研修施設の本館。

設計を手がけたのは、女優の鈴木京香さんが継承した住宅「ヴィラ・クゥクゥ」のデザインでも知られる名建築家・吉阪隆正氏(1917-1980)です。一見ユニークなこの建築には、深い思想と確かな設計哲学が宿っています。

この逆ピラミッド型の本館は、ただ奇抜なだけじゃありません。1999年にはDOCOMOMO Japanが「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」に選出し、2017年には「東京都選定歴史的建造物」にも登録。建築の世界では知られた“名作”なのです。

本館3階の談話室に入ると、空間自体が語りかけてくるような不思議な感覚に包まれます。建築書などに囲まれたソファ席で静かに過ごせるこの場所は、視線の抜けや高低差などが巧みに設計されており、「普通じゃない」のに心地よい、不思議な魅力があります。

なかでも目を引くのが、斜めに切り取られたような大きな窓。ちょっと管制室みたいなこのデザインから見えたのは、ちょうど満開の河津桜。人工物と自然のバランスが絶妙で、「この景色をどう切り取るか」まで設計に組み込まれているようでした。

2025年7月に開館60周年を迎える大学セミナーハウス。取材時にお話をうかがった理事長・萩上紘一さんからは、この場所を次の世代へ受け継ごうとする強い思いが伝わってきました。学生向けと思われがちですが、一般の方も利用可能です。気になる方は公式HPをチェックしてみてください!

図書館だったセミナー室と“多摩丘陵を望む絶景”

大学セミナーハウスの敷地内には、個性豊かな宿泊棟やセミナー棟が点在しています。こちらは、かつて図書館として使われていた建物で、現在はセミナー室として活用中。外壁には「ARS LONGA VITA BREVIS(芸術は長く、人生は短し)」の銘文が刻まれ、静かに学びを見守るような雰囲気をまとっています。

実はこの建物のドア、鈴木京香さんが継承した「ヴィラ・クゥクゥ」と同型のものだそう。こうしたディテールにも、大学セミナーハウスのこだわりが光ります。

テラスから見えるのは、多摩丘陵の雄大なパノラマ。まさか都心から車で1時間弱、八王子駅から15分ほどの場所に、こんな絶景があるなんて…思わず深呼吸したくなる場所です。左手に見えるのは、松下幸之助氏の支援により建てられた「松下館」。

施設間を歩いていると、古道沿いにひっそりと佇む道祖神(左上)に出会いました。かつての道筋が古地図にも記されていたそうで、この場所を行き来した人々の記憶に触れるような、静かな学びの時間に。セミナーハウスには「地形を活かす」という設計哲学があり、それがこうした場所にも息づいていることを実感しました。

そして、注目すべきもうひとつの建築が中央セミナー室。なんとこのピラミッド型、あの逆ピラミッド本館よりも先に設計されていたそうです。この模型を逆さにしたのが本館誕生のヒントになったのだとか。防音設備もしっかりしていて、演劇や音楽、思いきり声を出せる環境が整っています。

国際館と長期館で出会う、多彩な設計美

ログハウス風の外観が印象的な国際館は、1978年に建てられた木造の建物。木々の間に佇むその姿は信州の別荘地を思わせます。木のぬくもりとシンプルな構造が、滞在者に安心を与えます。

お隣にある赤い外壁が目を引く長期館は、建築家・富田玲子さんがキャリア初期に手がけた建物。吉阪隆正氏のU研究室から派生した「象設計集団」の創設メンバーでもある彼女の、若き日の情熱が詰まった一棟です。

ドアの装飾は各部屋の構造を表現しています。細部へのこだわりが素敵ですね!

内部はらせん状の構造になっていて、アスレチックや迷路のようです。不規則な空間に囲まれるうちに、いつのまにか自分の感覚もリセットされていくような不思議な体験が味わえます。

自然の中で語らうひととき。研修後はBBQでリラックス!

学びの場であっても、やっぱり仲間との語らいは欠かせない時間。セミナーハウスにはバーベキュー施設も完備されていて、宿泊者や研修利用者なら誰でも楽しめます。炭の火起こしはスタッフが行ってくれるので準備は不要。気軽に研修の打ち上げができますね。

少人数向けの新施設「BBQスクエア」も新たに整備されており、より使いやすくなっています。

木の温もりに包まれる『Dining Hall やまゆり』でランチを

2016年、開館50周年の節目に完成したのが『Dining Hall やまゆり』。外観も内装も多摩産材の木をふんだんに使っていて、あたたかみがあふれています。2019年には「ウッドシティTOKYOモデル建築賞 奨励賞」も受賞した実力派です。

中に入ると、木の香りがふわりと漂い、むき出しの太い梁が印象的。高い天井と大きな窓から自然光が差し込み、開放感と清々しさに満ちた空間が広がります。

ランチは『日替わり定食(960円)』をいただきました。オープンテラス席もあり、丘陵の風景を眺めながらの食事は格別。

この日は中華丼と揚げ餃子のセット。中華丼はたけのこ、いか、にんじん、はくさい、きくらげと具材もたっぷりで、身体にやさしい味つけでした。デザートにいただいたおはぎも、ほっとするやさしさです。

なお、食事のみの利用も可能ですが、事前予約制です。詳細は公式HPをご覧ください。


八王子ジャーニー編集部

事前にお問合せすれば施設内を散策することもできます!学生だけではなく学びたいすべての人にひらかれている大学セミナーハウス。建築やアートに触れたい、日常を少しだけリセットしたい方に、ぜひおすすめしたいスポットです!

大学セミナーハウス

※情報は取材当時のものです。来店の際は公式情報をご確認ください。

住所
東京都八王子市下柚木1987-1
アクセス
八王子駅南口【1番乗り場】から、「八60」「八61」「八63」系統のいずれかに乗車し、「野猿峠」で下車
営業時間
9:00〜17:00
電話
042-676-8511
Webサイト
https://iush.jp/
Twitter
@seminarhouse
Instagram
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