
宮沢賢治の名作『銀河鉄道の夜』を、漫画家・ますむらひろしが猫のキャラクターで描いた『銀河鉄道の夜』。その集大成を楽しめる展覧会「ますむらひろしの銀河鉄道の夜 ―完結編」が、八王子市夢美術館で2025年8月31日まで開催中!今回は特別に展示の中身&見どころをご紹介!
漫画原稿や資料を間近で見られる特別展
約40年にわたり描き続けた、ますむらひろし版『銀河鉄道の夜・四次稿編』の完結を記念する特別展。全4巻、600ページにおよぶ漫画の中から厳選された約170点の原画・カラー原稿を展示し、賢治の言葉とますむらの世界観が交差する幻想の旅が広がります。
“猫だからこそ描けた”死生観の表現や、深いテーマをやさしく伝える世界観に浸れます。

完結編となる第4巻を含む全4巻のビジュアルも展示。装丁も美しい!
そもそも「四次稿」って何?
宮沢賢治は『銀河鉄道の夜』を何度も書き直したことが知られています。今回の展示は、ますむらさんが描いた“四次稿+三次稿のハイブリッド版”のマンガ原稿で構成されています。
・四次稿:賢治が最後に手を加えた原稿。現在広く読まれているバージョン。
・三次稿:より抽象的で、ジョバンニがカムパネルラの死を知らないまま終わる展開。黒い帽子の男やブルカニロ博士が登場。
・ますむら版は、四次稿をベースに、三次稿などの重要要素を加えた独自の構成。
初見でも安心!仕掛けたっぷりの展示構成
展示入口では、青と黒の世界に包まれた巨大なアーチが迎えてくれます。

銀河鉄道の旅路を辿るようなマップも随所に展示。物語の地理感覚が楽しく理解できます。

銀河の全体図も。わかりやすい~!

展示は大きくAルートとBルートの2つに分かれていて、通常の順路をたどると四次稿ベースの王道ルート(A)を進むことになります。でも、会場内にはもうひとつの道、三次稿に登場する「黒い帽子の男」などが描かれたBルートも。

ここでは、原作の中でもより抽象的で“謎に満ちた銀河鉄道”の側面を体感できます。世界がどう変わるのか、ぜひ分岐点でBルートも選んでみて!

“青”がつむぐ銀河の物語
色彩を担当したのは、ますむらさんの奥様で少女漫画家・イラストレーターでもある中村昭子さん。

使用された絵具皿や色彩資料も展示され、青のバリエーションだけでも十分に見ごたえがあります。

実はこの展示会、“色彩”もキーとなっております。宮沢賢治の言葉から想像して描かれたという星空の青、銀河の青、夜の闇の青…。制作に込めた構想が読み取れる貴重な資料。

夜を走る列車と光の街。ますむら版ならではの幻想的なワンシーン。

「銀河鉄道の夜・四次稿編」より 原作:宮沢賢治 作画:ますむらひろし 彩色:増村昭子

「あれ、星空があまり描かれてない?」そう思った方もいるかもしれません。それもそのはず。ジョバンニたちは“銀河”を見上げているのではなく、すでに銀河の中を走っているから。見上げる星はなく“彼らのまわりすべてが星の海”ということなのです。この視点が更に作品を幻想的にさせているのかも!?

「銀河鉄道の夜・四次稿編」より 原作:宮沢賢治 作画:ますむらひろし 彩色:増村昭子
原画、宮沢賢治の複写原稿も
銀河鉄道は“ロングシート”だった!?ジョバンニとカムパネルラが乗る銀河鉄道は、岩手の軽便鉄道がモデルと言われています。

下書きの段階でもますむらさんのこだわりが光っています。

宮沢賢治が何度も書き直した原稿の複写版も見ることができます。

物語の“もうひとつのラスト”・・・?
展示の終盤には、宮沢賢治が遺した原稿についての興味深いエピソードも紹介されています。
実は『銀河鉄道の夜』って、最後まで書き上げられていない“未完の作品”。賢治の死後に整理された原稿の中には、いつのまにか行方不明になってしまったページもあるんだとか。しかも、その原稿には斜線が引かれていた形跡があります。
ますむらさんの“完結編”は、そんな空白の続きも描いています。物語の“もうひとつのラスト”を見届けたい人は、ぜひ会場で体感してみてください!

作者・ますむらひろしさんプロフィール
1952年・山形県米沢市生まれ。漫画家。
1970年代から活動を開始し、ファンタジックで温かみのある作風で知られる。代表作は、漫画『アタゴオル物語』シリーズと、宮沢賢治の小説を漫画化した『銀河鉄道の夜』。その功績により、1997年に日本漫画協会賞大賞受賞。2001年に宮沢賢治学会イーハトーブ賞を受賞している。
ますむらひろしと猫の深い関係
ますむらひろしさんが猫を描き続けるのは、「共感」と「自由」がキーワード。若い頃に読んだ宮沢賢治の『猫の事務所』の“かま猫”に自分を重ねたことがきっかけで、以来、猫はずっと創作の中心に。猫は時代やルールに縛られず、何より表情豊かで描いてて楽しい!とのこと。
『銀河鉄道の夜』を猫で描いたのも、幻想的な物語世界にぴったりだったから。かわいくて、ちょっと切なくて、どこか哲学的。ますむら作品にとって、猫はただの動物じゃなく、物語を語るための“心の代弁者”なんです。

「銀河鉄道の夜・四次稿編」より 原作:宮沢賢治 作画:ますむらひろし 彩色:増村昭子
ご自宅でも猫を飼っており、溺愛している様子のXアカウント!かわいすぎます(笑)
モンモンが2階のテラスで洗濯籠の中で寝てたらしく、暑いのでと一階に籠ごと運ばれてきたので、「熱中症になるぞ、なると猫の救急車が来るぞ、にゃーぽーにゃーぽー」と言ったら、奥方に受けた。 pic.twitter.com/tMFpK4vMR6
— ますむらひろし (@masumurahiroshi) July 9, 2025
ますむら先生が監修した貴重な展覧会
ますむらさんご本人が原画を厳選し、監修したこの空間は、ファンにとってはまさに聖地のような場所。現時点で巡回の予定はなく、八王子市夢美術館でしか見られない貴重な展示となっています。
『銀河鉄道の夜』をまだ読んだことがないお子さまでも楽しめる構成なので、夏休みの自由研究や読書感想文の題材にもおすすめ。関連グッズや書籍の販売コーナーもあり、おうちに帰ってからも“銀河の旅”を続けられます。

また、会場を出た所には、ますむら夫妻へのメッセージを書くコーナーも設置されています!ぜひ温かいメッセージを届けましょう!

展示のボードにはご本人のサインが!こちらもぜひチェック!
昨日ますむら先生が来場されました‼メッセージボードにサインをいただきました😁😺 #八王子市夢美術館 #ますむらひろしの銀河鉄道の夜 pic.twitter.com/rtcf8Esx5S
— ますむらひろしの銀河鉄道の夜-完結編 (@milkyway_yumebi) June 29, 2025
開催概要
- 日程
- 2025年6月27日(金)~8月31日(日)
- 時間
- 10:00~19:00(入館は18:30まで)
- 会場
- 八王子市夢美術館
- 休館日
- 月曜日(祝日の場合は翌平日)
- 観覧料
- 一般800円/学生・65歳以上400円/高校生以下無料
展覧会の見どころまとめ
【1】約170点におよぶ原画・カラー原稿の展示
【2】三次稿の「黒い帽子の男」セクション
【3】ロングシートの鉄道車両を再現したスケッチ展示
【4】創作メモなど、制作過程の裏側がわかる資料展示
【5】猫で描く死生観。優しく伝える“死者を送る物語”
八王子市夢美術館公式サイト
【ますむらひろしの鉄道銀河の夜-完結編】公式X

ブルーに包まれる幻想的な空間は、この夏にぴったり。物語を知らない人も、“銀河の旅”の魅力にきっと惹きこまれますよ。ぜひ会場へ!
八王子市夢美術館
※情報は取材当時のものです。来店の際は公式情報をご確認ください。
- 住所
- 東京都八王子市八日町8-1 ビュータワー八王子2F
- アクセス
- 八王子駅北口より 徒歩15分
- 営業時間
- 10:00〜19:00
※入館は18:30まで - 定休日
- 月曜日
- 電話
- 042-621-6777
- Webサイト
- https://www.yumebi.com/
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