「八王子が僕の全てを形成してくれた」LITTLEが語る地元の絆とこの街から生まれる音楽【はちんちゅ vol.4】

八王子をルーツに活躍する人に迫る企画『はちんちゅ(八王子人)』。第4回は、日本のヒップホップシーンを牽引する『KICK THE CAN CREW』のMC・LITTLE(リトル)さんです。歌が苦手だった少年が、なぜラップと出会い、八王子を背負って音楽の道を歩み続けるようになったのか。唯一無二の活動と、この街への想いを語ります。

8月8日夜8時、LITTLEが『八王子商店』新店舗をオープン!アパレルもバーも楽しめる新スポット
公開日: 2025.08.09
八王子出身のミュージシャンLITTLEさんが8月8日、八王子駅近くに『八王子商店』を開店。昼はアパレル販売、夜はバー営業も楽しめます。 …
LITTLE(リトル)
KICK THE CAN CREWのリーダーであり“ライマー”として知られる愛韻家。1998年にソロデビュー、2001年にはKICK THE CAN CREWとしてもメジャーデビューし、その翌年紅白歌合戦に出場。活動休止後もソロやUL、アスタラビスタなどのユニットで活躍し、2017年にグループを再始動。八王子発ユニット「八王子少年」や『愛韻家協会』『LOVE RHYME AWARD』などを通じ、韻と音楽、地元への想いを軸に唯一無二の活動を展開している。
公式HP:https://little.vc/
持たざる者のカルチャー
――LITTLEさんは八王子で生まれ育った生粋の八王子っ子だと伺っています。
そうですね。もう、おじいちゃんの代からずっと八王子です。僕が知ってる範囲の先祖は全員八王子なんで、移り住んできたみたいな記憶がないんです。両親も八王子の出身ですね。
――幼少期から音楽が好きだったんですか?
小学校の高学年ぐらいでバンドブームが来たので、その頃はみんなバンドをやってるような時代でした。歌番組もすごく多くて、演歌の人とロックの人が一緒に出たりして。親が見ているテレビの中に、ちゃんと子どもが喜ぶ音楽もあった。そういう時代でしたね。
――やはり当時から音楽は得意でしたか?
いや、それが全くの逆で。僕は音楽が本当に苦手で、中学の音楽の成績は1年生から3年生までずっと「1」だったんですよ(笑)

――ええ、それは意外です!
だからいまだに思うんですけど、『ザ・ベストテン』とかで最後に全員で歌うじゃないですか。こっちゃラッパーだぞと。歌が歌えないからラップしてるタイプの人間もいるんだぞっていう(笑)
今でこそ歌って踊れるラッパーがいっぱいいますけど、当時は持たざる者のカルチャーだったと思うんで。

八王子の伝説的クラブ「ジョーズカフェ」
――ラップはいつ頃から始められたんですか?
それがすごく遅くて、始めたのは18歳とかですね。DJは好きでやっていたんですけど、自分でマイクを持つようになったのはその頃です。でも19歳にはもうKICK THE CAN CREWのメンバーと会って、コンピのCDにも参加したりしているので。だからデビュー当時は、他の2人に比べて「新人のリトル」ってよく書かれてました。
――当時はどんな場所で活動されていたんですか?
当時、八王子には『ジョーズカフェ』っていうクラブがあって、そこでDJをしていました。そのクラブは、『there』っていう伝説的な古着屋を何店舗も経営していたジョーさんというプロデューサーがやっていたお店で、ジョーさんは八王子のカルチャーを根付かせた第一人者みたいな存在でしたね。都内のイベントもよく来ていました。『ジョーズカフェ』はすごく人気のある場所でした。
――ご自身の中で「俺、ヒップホップやってるな」と強く実感した瞬間はいつでしたか?
それは随分後になってからですね。ヒップホップを作ったオリジネーターみたいな人たちがいるんですけど、その人たちとニューヨークでライブをやった時です。僕らのステージにその人たちが上がってきてくれて。その時に初めて「本物のヒップホップに触れた」って感じました。

ローカルな歌詞と八王子愛
――地元に特化した曲づくりでは、どんなことを意識していますか?
ラッパーを始めた最初の頃から、高尾とか浅川とか、地名を出して歌ってたんです。ファンキー加藤君とかは「地元のこと言ってる!」って反応してくれましたけどね。今はさらに一歩深く踏み込んで、例えば加藤君と作った曲では「米山産婦人科」や「スーパーアルプス」を入れたり。
――かなりローカルな内容ですね(笑)
他の町の人が聞いても分からないかもしれないけど(笑)
でも、そういう尖ったことを言っても大丈夫だろうと思って。昔からこのスタイルでやっています。
――八王子出身は連帯感が強い感じがします。
本当にそう!ハワイでもオーストラリアでも、ニューヨークでも、海外のどこに行っても「俺、八王子っす」って声をかけられるんですよ。それだけで話が成り立つのがすごい。その繋がりの強さは感じますね。

――『MY HOMIE』(feat.ファンキー加藤)にも、その想いが込められているのでしょうか。
まさにそうです。ちょうどコロナ禍で、なかなかみんなと会えなかった時期でしたけど、どの町に行っても八王子の人はいるから、寂しくなることはない。どこに行ってもやっていけるなって気持ちになれるんです。ライブで知らない町に行って不安な時でも、「でもこの町にも八王子の人はいるしな」って思える。その感覚は大きいですね。

【待望のコラボ】MY HOMIE feat.ファンキー加藤 / 八王子少年
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心はいつも八王子
――活動が本格化する中で、八王子の存在をどう意識していましたか?
活動が忙しくなって都内に部屋を借りていた時期でさえ、心は常に八王子にありました。本当にギリギリまで仕事して、終電で帰って。朝までクラブで遊んでそのまま仕事に行ったり、漫画喫茶で仮眠したり。なんで俺はこんなに八王子に帰ってるんだって思ってましたけど(笑)、それが自分にとっての価値だから。
――「八王子少年」として活動を始められたきっかけは何だったのでしょうか。
都内に部屋を借りてから、「お前、八王子、八王子言ってるけど、いないじゃん」って思われるのが嫌で、あまり言わなくなった時期があったんです。でも、子どもができて、自分が育ったこの場所で、と。それで都内の部屋を全部なくして八王子に戻ってきた時に、「これはもう、大手を振って八王子だって言うしかないな」と。今までの想いが爆発した感じです。
――最後に、八王子で夢を追う若い世代にメッセージをお願いします。
今は世界中どこでも繋がれる時代だけど、だからこそ、この場所でしか感じられない何かを意識的に持ってると、将来どこかで活躍する時に八王子の話ばっかりする人になると思うから(笑)
ここで得たものを、ちゃんとキープしてほしいですね。


ラップは“持たざるもののカルチャー”という言葉に胸を打たれました。そこから滲み出る反骨心こそが、LITTLEさんの唯一無二の音楽を生み出しているのだと強く感じました。どこに行っても八王子の仲間とつながる――その強い八王子愛と絆を感じるインタビューでした。
八王子商店
※情報は取材当時のものです。来店の際は公式情報をご確認ください。
- 住所
- 東京都八王子市中町8-9 八王子コスモビル3階
- 営業時間
- 火〜金12:00〜14:00、20:00〜24:00 土20:00〜24:00
- 定休日
- 日曜日、月曜日
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