一流ホテルの料理人が家業を継いで再出発|八王子・長房『寿司一心』

一流ホテルの料理人が実家の寿司屋を継いだ

 以前、ある飲食店の取材をしていた時に、客として来た人に少し話を聞いてみた。すると数日後に寿司店をオープンする店の店主だという。その場で取材させていただくことになったのだが、想像もしていなかったドラマが彼にはあった。

 店主の名は「常磐昌也」。かつて一流ホテルである「横浜ベイシェラトンホテル」で寿司責任者をしており、野球日本代表「侍ジャパン」や国際組織の世界総会に寿司を提供するほど腕を買われた料理人だった。

 しかし順風満帆の人生を送っていた彼に、運命の分岐路が訪れた。

 実家である「寿司一心」を営む父・正武さんに大きな病気が見つかったのだ。昌也さんは悩んだ末にホテルを辞め、店を継ぐことを決意。しかしそう簡単に事は進まなかった。

 まだ正武さんが元気な頃、手伝うために板場に入ろうとする昌也さんに対し「入ってこなくていいよ、要らねぇ」「ペースが乱れる」と啖呵を切っていた。15歳で寿司屋に丁稚で入った職人気質の正武さんは、息子を素直に認めることができなかった。

(上:丁稚になった15歳の頃 下:20歳頃、寿司屋の親方と)

 しかし、死期が近づくなかで改めて店を継ぐ意思を伝えると「やってくれる?」「じゃないと『一心』がバラバラになっちゃうから」と言われた。正武さんは店を継がせることに関してあまり多くは語らなかったが、昌也さんはその言葉を聞いて店を託す強い意思を感じたという。

 父が亡くなり再オープンの準備を進めていく途中で僕と出会ったというわけだ。令和3年12月18日、晴れわたる青空のなか再オープン。

メニュー

 新しい「寿司一心」のメニューは下記のとおりだ。すべてのメニューが店内飲食だけでなく持ち帰りでも注文することができる。さまざまな種類のにぎりが楽しめる「一心おまかせ寿司」「特上寿司」「上寿司」をはじめ、一品に特化した「本鮪 赤身」「本鮪 中とろ」、先代から受け継いだ「穴子にぎり」なども。また家族連れやホームパーティで楽しみたい場合は各メニューを人数分盛り込んで提供することも可能。「ちらし」(特上・上・並)「ばらちらし」もあり、季節の行事やお祝い事にもちょうどいい。

「一心おまかせ寿司」

 客第一号として「一心おまかせ寿司」をカウンターでいただいた。

 ネタは豊洲市場に毎朝仕入れに行くので鮮度は抜群。逆に、あえて一日寝かせて甘味を引き出すことも。香りや温度、喉でネタとシャリがほぐれていく食感にもこだわっているという。

 カウンターで提供される寿司は煮切り醤油や塩で味が完成されているので、出されたそのままをいただく。

 また「酒ディプロマ」資格を所持する昌也さんがどんな日本酒を仕入れるのか、これから楽しみである。酒に合わせたつまみや一品料理も提供可能。

(左上:自家製香の物 右上:小肌と大葉の月環巻き 左下:牡丹海老の御造里 右下:かますの酒塩焼き)

 42年間続いた伝統を受け継ぎ、自身が培った経験を生かし、八王子・長房の地で家族一丸となっての再出発。ぜひ食べてみてほしい。

詳しい内容はぜひ動画からもご覧ください。

寿司一心

※情報は取材当時のものです。来店の際は公式情報をご確認ください。

住所
東京都八王子市長房町945-12
アクセス
高尾駅から車で11分
営業時間
12:00〜14:30 / 17:00〜22:00
定休日
不定休
電話
042-665-7506
店舗情報を開く

関連タグ

WRITER

pekohara

pekohara

記事一覧

八王子在住のフォトグラファー、グルメブロガー。酒と美味しいものが大好きな2児の父親です。