【八王子の偉人・変人・哲人】八王子生まれの社会運動家・橋本義夫さん
庶民の文章運動『ふだん記』運動・八王子生まれの社会運動家・橋本義夫さんさんの紹介記事を、揺籃社の山崎領太郎氏に『よみっこ』に投稿していただきました。
『ふだん記』運動
昭和40年代に、八王子から全国へと波及していった庶民の文章運動『ふだん記』運動をご存じでしょうか?八王子生まれの社会運動家、橋本義夫さん(1985年没)の提唱によるものでした。橋本さんは「下手に書きなさい」と、まずはとにかく文章を書いてみることを庶民にすすめました。
「上手本意の競争をしないで、人生の報告書を1冊残すこと。美文名文などより、自分の生きてきた事実をありのままに記録すること」と唱え、市井の人々を励ましました。そして、この運動が広がって庶民自身の歴史が市民権を得ることで、人類史上かつてなかった新しい文化が芽生えると考えていました。
20歳頃の橋本義夫さん(写真:清水工房・揺籃社HPより)
時代のさきがけ
この主張は、職業や地位、男女の差をこえて広く庶民に受け入れられました。読む側・見る側にいた人々が、書く側・作る側にまわり、自己表現の可能性にめざめたのです。今では全国各地に「自分史」と名の付くグループや、自治体によるセミナーまであり、自分史ブームの様相を呈していますが、そのさきがけとなった運動です。
現在、コミケで大量に販売される同人誌、個人や小グループで発行されるZINE(ジン)、また少し趣は異なるかもしれませんが、SNSやブログといった個人の発信メディアもまた、この延長線上にあるものだといえるでしょう。
その後、『ふだん記』運動は全国にいくつものグループを生みだし、各地において機関誌を出して、「独立するが孤立しない」をモットーに交流し合うようになります。こうして、1人よりも大勢の人と交流しながら書いて、ある程度書きためた文章を編集しなおして1冊の自分史にする流れができました。それらは国会図書館や各地の図書館に寄贈され、半永久的に保存されています。八王子の中央図書館にも多数、蔵書されています。
揺籃社のいわれ
橋本さんは戦前、八日町で「ようらん社」という書店を開いていました。多摩地域では入手しづらかった岩波文庫を並べるなど、若手研究者が集う地域のコミュニティセンターのような場となっていました。しかし、八王子空襲で被災。戦後は開店できないままとなりました。
その名前が復活したのは1984年。株式会社清水工房の創業者・清水英雄が、扱っていた自費出版本を書店に流通させたいと考え、長年、『ふだん記』の印刷でお世話になっていた橋本さんに相談。かつての屋号、「ようらん社」を漢字表記にした「揺籃社」を譲り受けました。いま八王子の歴史や文化を扱った郷土本の発行元となっている揺籃社はこうして生まれたのです。(株式会社清水工房・揺籃社 編集山崎領太郎)
建碑運動(石の碑)
1951(昭和26)年「地方文化研究会」をつくった橋本は、地域に大きな貢献をしながら埋もれて顧みられない人々をあいついで発掘し、名誉を回復してその業績を後世に永く伝えるために、建碑運動をしていった。その数15基をこえている。(文:清水工房・揺籃社HPより)絹の道の碑(写真:清水工房・揺籃社HPより)
絹の道(写真:清水工房・揺籃社HPより)
コックス碑(写真:清水工房・揺籃社HPより)
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八王子を中心とした超地域密着型(ハイパーローカル)の地域情報紙です。新聞配達の流通を使い週6日発行・お届けをしています。※現在は読売新聞の購読者に限定して、朝刊に折り込む形で発行しています(日刊:5,000部)。八王子(主にめじろ台1~4丁目、緑町、山田町、椚田町、狭間町、館町、小比企町、寺田町、大船町、西片倉2~3丁目、みなみ野、七国※一部分に配布されないところもあります)に配達されています。