
能登半島地震の被災地・珠洲市で営業を続ける仮設の食堂へ、八王子の「きらら工房」が包丁と砥石を寄贈。被災地で出会った料理人たちを支えたいという想いから始まった「包丁すずなりプロジェクト」は、多くの市民の共感と協力を得て実現しました。モノだけでなく、人の温かい気持ちを一緒に届けた支援の記録です。

【2/5】ポップアップストア出店!リピーター続出の包丁研ぎ屋『きらら工房』
公開日: 2023.02.02
桑都テラスのポップアップストアに包丁研ぎ屋『きらら工房』が2/5(日)に出店。包丁を研ぎ始めて20年、リピーター続出の腕前!切れなくなった包丁を買い替える前に、一度きらら工房の包丁研ぎをお試しください。…
寄付金で包丁を
多くの方のご協力により集まった寄付金で、包丁12本と砥石4本を購入し、今年7月に能登半島先端の珠洲市にある「すずキッチン」と「すずなり食堂」へ無事届けることができました。
私は2024年4月から能登半島へ災害ボランティアで行っており、現地では被災された料理人の方たちが立ち上げた仮設店舗で、食堂とお弁当販売をしているお店で毎回、包丁を研いでいます。これらの店は地元の方をはじめ、工事関係者やボランティアの人達で賑わい、地域の貴重なコミュニティースペースの役割も担っています。

寄贈した包丁を手に「すずキッチン」「すずなり食堂」の皆さん
ある時、現地の方の「能登は見捨てられている」「能登は忘れられている」という言葉を聞き、「自分にもっと何かできる事はないのか」と考えるようになりました。そんな中、毎回研いでいた「すずキッチン」「すずなり食堂」の包丁が、働く人たちが自宅から持ち寄った家庭用の包丁であることを知り、「私一人の力で大きな事はできないけれど、協力してくれる人を募ってそのお店で使ってもらう包丁を寄贈しよう」と考え、今回のプロジェクトを立ち上げました。
きらら工房出店時には募金箱を置き、チラシを配り、オリジナルグッズや能登で使われていた輪島塗、寄付された包丁のチャリティー販売を行い、SNSで告知して協力者を募りました。その結果、目標額を超える寄付が集まり、メンテナンス用の砥石や特殊な包丁(尺サイズの牛刀)等も購入でき、無事手渡すことができました。

寄贈した包丁に入れた銘「能登福幸すずなり」
たくさんの応援
包丁を寄贈できた事と同時に、もう一つできた事があります。それは「能登を思うたくさんの人の気持ちを一緒に渡す事ができた」という事です。「能登は見捨てられている」「能登は忘れられている」という言葉を、実は私も感じていました。被災地に行けば厳しい現状が目の前に広がり、先の見えない中で多くの方が本当に大変な思いをしています。ですが、一度八王子に戻れば普通に毎日が繰り返され、能登の話をする人はほとんどいませんでした。
「能登半島復興支援」のポスターを掲示し募金箱を置いたところ、たくさんのお客様から声がかけられるようになりました。「能登は今どうなっているんですか?」「能登の人たちは大丈夫なんですか?」「テレビで能登のニュースを見る度に、現地の人の大変さを思い涙が出ます」「自分が能登にできる事は無いかずっと考えていたけど、やっと自分にも協力できる」「現地に行けずもどかしい思いをしていて、少しでも助けになれば」「落ち着いたら絶対に能登に旅行に行きます」「旅行に行くくらいしかできないから、この前能登に行ってきました」「年齢や仕事などの事情で自分はボランティアに行けないので、私の分まで頑張ってください」などなど。募金をするためだけに足を運んでくださった方もいました。

すずなり食堂の福幸丼。自然あふれる能登は海の幸、山の幸がたくさんあります
お客様からの温かい気持ちを一緒に渡せた事は、もしかしたら包丁を渡す以上に大切な事だったのではないかと思っています。震災から1年半、豪雨災害から10か月、現地は解体が進み更地が増えて、復興のスタート地点に立っています。これから長い復興の道のりを歩む能登に、たくさんの方の気持ちがこもった包丁がそっと寄り添い続けます。

包丁を通してつながる、想いと支援。能登の地にそっと寄り添う「包丁すずなりプロジェクト」は、たくさんの優しさでできていました。
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八王子を中心とした超地域密着型(ハイパーローカル)の地域情報紙です。新聞配達の流通を使い週6日発行・お届けをしています。※現在は読売新聞の購読者に限定して、朝刊に折り込む形で発行しています(日刊:5,000部)。八王子(主にめじろ台1~4丁目、緑町、山田町、椚田町、狭間町、館町、小比企町、寺田町、大船町、西片倉2~3丁目、みなみ野、七国※一部分に配布されないところもあります)に配達されています。