中学生が考える「平和を受け継ぐ」方法とは? グローバルユース国連大使 NATSUさん

中学生が考える「平和を受け継ぐ」方法とは? グローバルユース国連大使 NATSUさん

2025年9月15日(月・祝)19:00より、八王子市生涯学習センター(クリエイトホール)にて、八王子市の中学3年生・NATSUさんによるグローバルユース国連大使の活動報告会が行われました。未来の平和を「ジブンゴト」として考える大切さを伝える場となりました。

【9/15・参加無料】八王子の中学生が伝える!ドイツに学ぶ、戦争をジブンゴトにする伝え方・遺し方

公開日: 2025.09.12

9/15(月祝)19:00〜八王子クリエイトホールにて開催。中学生が国連大使としてドイツや広島を訪問。戦争と平和を「ジブンゴト」として捉える大切さを学び、伝える活動報告会です。…

倍率10倍の難関を突破

グローバルユース国連大使の活動をご存じですか? 日本青年会議所が2017年から実施するプロジェクトで、グローバルな視点を持つ未来の外交人材を育成することを目的として、全国の中高生から選ばれます。八王子から中学3年生のNATSUさん(活動名)が選ばれ、ドイツや広島での研修を終え、9月15日にクリエイトホール(東町)で活動報告を行いました。

今年度の大使選考は、定員20人に対し全国から200件以上の応募があり、倍率は10倍超。八王子から選出された5人目の大使となりました。選考は課題作文と英語での自己PRがあり、幼少期から英語に親しみ英検準1級を持つNATSUさんにとって得意分野でした。選考基準は非公表ですが、自主性の高さが評価されたようです。

グローバルユースのユニフォームで臨む

東京研修でのドイツ大使館への訪問、ドイツ研修での日本大使館訪問など、正式な場面では必ず着用していた「ユニフォーム」。活動報告会も大使の重要な役割の一つのため、この日はこのスタイルで臨みました。

学校でのプレゼンは慣れていますが、自分がメインスピーカーとなる報告会は、NATSUさんにとって今回が初めて。発表前は不安を感じていたそうです。しかし、目を見ながら頷いてくれる人や、一生懸命にメモをとる人の姿を見て「自分の伝えたいことが、少なからず伝わった」と実感が持てたようです。「勇気を出して報告会を開催して良かった」と振り返っていました。

原爆と強制収容所

2025年度のグローバルユース国連大使たちは、7月に広島と東京で、8月にはドイツで研修を行いました。ドイツ研修で訪れたザクセンハウゼン強制収容所では、80年前まで行われていたという非人道的な歴史に触れ、平和の尊さを改めて学びました。ベルリンの壁では、壁を乗り越えたその先にもう一枚壁があり、壁と壁の間の敷地で銃撃により命を落とした人が多かったという事実や祖父母の体験談など生の声を聞いて育った方の話を聞く機会もあったそうです。

日本と比べて印象的だったのは、ドイツでは日常的に歴史と向き合う機会が多いこと。戦争の記憶は国語の教科書や絵本で小学生のうちから触れられ、街中にはユダヤ人犠牲者らを弔う碑や戦争に関係するモニュメントなどが点在しています。高校1年生になると、年間を通じてホロコーストを学び、下級生に伝える仕組みもあり、「学んだら伝える」という意識が根づいています。戦争にまつわる日には、若者もSNSで平和について発信し、語り合うことも珍しくないそうです。

戦争を「ジブンゴト」に

今年のグローバルユース国連大使事業のテーマは「恒久的世界平和の実現」。NATSUさんは母親の影響で幼い頃から「世界と自分とのかかわり」に関心を持ち、ロシアによるウクライナ侵攻を機に平和への思いを強めました。自らの探求テーマを「戦争を『ジブンゴト』としてとらえるには?」に設定し、平和の尊さを次の世代にもつなぐためには何が必要なのかを探ったそうです。ドイツにはそのヒントがたくさんありました。 例えば、「つまづき石」。金属プレートに迫害されたユダヤ人らの名前を刻み、少しつまづくよう舗道に埋められており、本当に少しつまづくそうです。何気ない日常の中で意図せずに、歴史戦争の記憶を意識させる仕組みに気付き、そこから学びを得ました。

「八王子でも、甲州街道のいちょう並木に、空襲で一部が焼けた戦災樹木がありますが、歩いているだけでは気づかれることはあまりありません。高尾駅のホームにある米軍機による銃撃痕も意識しなければ見落としてしまう」。身近に多くの戦跡があるにも関わらず、それを活用しきれていないように感じます。「地域の人の目に触れるようになることが、戦争をジブンゴトにする第一歩です」。

記憶が受け継がれるサイクルを

活動から得た学びを通じてNATSUさんは、学校教育で使える「オリジナル教育コンテンツ」の制作を目指しています。「地域の方と連携しフィールドワークで調べ、自分の言葉で伝えることが大切。学ぶだけでなく、言葉にすることでジブンゴトになる」と考えています。「理想的なのは、ドイツのように1つ下の学年に伝えること。それを毎年繰り返せば、次は自分の番という責任感も生まれます」。背景には「自分たちは戦争体験を直接聞ける最後の世代」という思いがあり、記憶を受け継ぐサイクルをつくるための取り組みを見据えています。

発表の後は、出口で参加者にドイツのお土産としてソフトキャンディーを配りました。「ドイツでとても有名で、皆が大好きなキャンディだと聞いて買って帰りました」。滞在中、ルームメイトとは夜遅くまで平和についてディスカッションもしましたが、学校や家族のこと、コスメや音楽のことなどでおしゃべりも盛り上がり、同世代との交流も楽しめました。「ドイツの大使とは毎日のようにやり取りしています。春に今度は家族と来日するそうなので今から楽しみにしています」。未来へと続く国際交流という点でも価値のある研修だったようです。


株式会社愛され商店街

NATSUさんは昨年、八王子市主催の「青少年海外派遣」で台湾・高雄市を訪れました。今回の報告会後には、小池百合子都知事へ表敬訪問し、活動報告をしたそうです。

生涯学習センター(クリエイトホール)

※情報は取材当時のものです。来店の際は公式情報をご確認ください。

住所
東京都八王子市東町5-6
アクセス
八王子駅北口 徒歩4分
営業時間
9:00~22:00
定休日
毎月第一火曜日(第一火曜日が祝日又は年末年始の場合は翌週)
電話
042-648-2231
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元雑誌編集者と地域紙記者。最近は写真に力を入れています。