【よみっこ】小比企に刀匠がいた 磯沼孝氏・尾川恵造氏に聞く

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地域情報紙「よみっこ」

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八王子を中心とした超地域密着型(ハイパーローカル)の地域情報紙「よみっこ」です。

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現在は読売新聞の購読者に限定して、朝刊に折り込む形で発行しています(日刊:5,000部)。
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紙媒体でしか見ることが出来ない地域限定の情報ですが、八王子ジャーニーでもご覧いただけるようになりました!!
日々更新してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

「康近」作の脇差を発見

小比企町在住の磯沼孝氏より、『小比企で打たれた脇差が手に入りました』との連絡がありました。
こんな身近なところに刀匠が?

生家のタンスから

事の始まりは、尾川さんが生家(小比企町)を片付けていた時のこと。タンスの中から錆びついた刀を発見。
その時の事を尾川さんは、『どうしてよいか分かりませんでした。刀を持っていると銃刀法違反ではないか、とかいろいろ考えました。そこで思い出したのが、地元の後輩である磯沼孝氏のことです。彼は、居合や抜刀もやっているし、刀については詳しいだろうと思ったのです。』と。

一方、磯沼氏は高尾山薬王院に奉納されている23本の日本刀を手入れするなど日本刀には造詣が深く、郷土刀にも大きな興味を持っています。そこへ届いた尾川氏からの連絡。
磯沼氏は、その脇差の錆を落とし、研ぎをかけ、白鞘を付けました。

この脇差は、正近の弟子である「康近」の作でした。

小比企の康近とは

康近が生まれた大島(相模原)の「法性寺」に、康近の碑があることが分かり訪ねます。
その碑には、以下のように記されていました。
「刀匠吟龍子藤原泰(康)近文政10年相州高座群大島村に生れ(中略)幕末の巨匠細川正義門(八王子)、小比企の住人濤江介正近に学び現在の相模原市大島3316番地にて作刀す 明治2年4月19日42才没」

康近作の脇差には「小比企」という文字が刻まれています

ここに出てくる康近の師匠である正近は、有名な「下原刀」(八王子市:現在の恩方)の刀匠の一人、「安貞」と合作刀を薬王院に奉納している名匠です。
その郷土刀を長年探していたという磯沼氏。なんとその「正近」作の刀もこの直後に入手したとの事。
『弟子の康近の刀が呼び寄せたとしか思えませんね。正近の刀は、遠く広島県で登録されていました。八王子で作られた刀は、関ヶ原の戦い等でもたくさん使用されていますし、全国に広がっていたとしても不思議ではありません。
小比企の鍛冶場があった場所は想像はつきますが明確ではありません。鎌や鍬等を作りながら刀も打っていたのでしょう。
刀の魅力ですか?まずは製法ですね。砂鉄を沈殿法により集めることから始まり、何層にも打ち上げ、別の材料で刃を付け…、世界で最も切れると言われる刀が出来上がります。』と、磯沼氏。

正近作短刀の登録証

塚本五十馬さん?

この正近作の刀には「賀塚本五十馬君万歳於小比企濤江介正近」と刻まれています。
何かのお祝いの際につくられたのでしょうか。
塚本五十馬さんという名前(江戸時代後期~明治初期)に心当たりの方がいましたら、是非よみっこに連絡(上題字下まで)をお願いします。

雑談の中から

上:泰近作脇差 下:正近作短刀

『これって刃がついていて実際に切れるんですか?持つための許可がいるんですか?』という質問に、『もちろん切れますよ。それと、皆さん誤解しているようですが、許可は要りません。刀の登録の担当は各都道府県の教育委員会なのですが、そこで価値があると判断されると登録されます。
その登録証を持っていれば美術品として誰でも持つことができるのです。』と。
また、刀の注文を受けると通常、複数作られ、その中で最も出来栄えの良いものを納めるそうで、落語の「真打」という言葉の由来となっています。

磯沼氏は、日本の伝統を伝えるオリ・パラの関連イベントで、抜刀を披露(日比谷)することも決定しているそうです。

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